アルコールと自殺率との密接な関係が、この国では伝えられていない

しばらく、「アルコール+α」以前に、「アルコール」そのものと自殺との関連について記していきます。十分に伝えられているとは思いませんから。

まずは、海外の研究をまとめた産業医実務研修センターのサイト内にあるレビューをごらんください。

「アルコールの自殺率に与える影響は男性にしか認められない」というノルウェーの研究が、今の日本の自殺率の男女差を想起させますが、最後にある以下の事実を未来のために強く記憶しておきたいと思います。

「スウェーデンにおける一人当たりのアルコール摂取量を25%減少させたことで肝硬変、事故、自殺による死亡を半分にすることができた。また同様に、大量飲酒常用者(例えば上位5%)のアルコール量を36%減らすことによって肝硬変、事故、自殺による死亡を半減させることができた。」


もちろん日本でも、研究発表はされています(最近になって、という感じはありますが・・・)。

まず、厚生労働省研究班による2006年の発表全く飲まない人も自殺率が高いということが、少し話題になった発表ですが、それについての但し書きもご覧ください。

2007年になると、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の発表が出てきています。「飲酒量が増加することで自殺リスクが高まる」という単純な結論は、果たして前の研究ほど広く伝えられたでしょうか。

日本での研究ではありませんが、これらより以前に2000年に公表された「WHOによる自殺予防の手引き」が2002年に厚生労働省の補助金で翻訳されています。「これらの手引きはわが国(日本)でも十分に利用可能なものと考えられる」と翻訳時に注釈が加えられた手引きの中で、アルコールと自殺との関連が、はっきりと指摘されています

アルコールが自殺に与える影響は、国によっても認められていると考えて良いのではないでしょうか。


アルコール飲料メーカーのサイトには、必ず、アルコールと健康について書かれたページがあります。

キリンの場合。

アサヒの場合。

サントリーの場合。

サッポロの場合。


アルコールと自殺率との関連についての記述は見当たりません。アルコール依存症の説明の中にさえ。

他にも重要なことが省かれていますが、それは、また後日。


ところで、
私は基本的に規制論者ではありません。選択はできるだけ自由であるべきです。しかし、そのために情報発信はフェアであるべきだと思っています。

話はそれますが、では、危険性が発信され続けている「たばこ」についてフェアとは思いません。1社独占が法律で決められているため、選択の自由もフェアな情報発信も、原理的に不可能です。

「WHOによる自殺予防の手引き」に示されているアルコールの危険性

前回の記事で、「WHOにより自殺予防の手引き」へのリンクを忘れていました。重要な文書ですので、ここで再度触れます。


文章量はそんなに多くありませんから、ぜひ全体を読んで欲しいと思いますが、ポイントとなる記述を抜き出しておきます。


・自殺者の約1/3 は生前にアルコール依存症であった。※
・アルコール依存症患者の5〜10%が自殺する。
・自殺を決行する際に酩酊状態にあった者が多い。

※アルコール依存症と自殺の関連は、欧米ではわが国以上に強調されている。


※印の注釈は、日本語への翻訳時に付けられたものです。しかしこの日本側のコメントの、裏づけとなるような研究は、あるのでしょうか(誰か教えていただけないでしょうか)。


もうひとつ重要なポイントを上げておきます。

「うつ病とアルコール依存症が合併した場合、自殺の危険は一層高くなる。」

過去の安酒ブームは自殺者増と結びついているか

年間自殺者数、自殺率の推移はこうなっています。厚生労働省発表の自殺死亡の年次推移

98年は、発泡酒市場拡大とのリンクを疑っていますが、以前のピークには何との関連が疑われるでしょうか。

一つ前のピークは、1983〜87年でした。チューハイブームと重なります。

その前のピークは、1954〜60年でした。三増酒(三倍増醸清酒)の消費と結びついているのではないかと予想しています。


何か、情報がある方は是非教えてください。

アルコール依存の男女比率と自殺者の男女比率は近い

前のブログで、圧倒的に女性に多いうつ病と、圧倒的に男性に多い自殺とを安易に結びつけることに対して疑問を提出しました。

圧倒的に男性に多いアルコール依存との関連、
アルコールの影響を、
なぜ本気になって探らないのでしょうか。

自殺衝動供給源としてのアルコール

自殺には通常、大きな衝動、かなりエネルギーが必要です。

アルコールに注目しているのは、アルコールが、そのエネルギー供給源として最も一般的だからです。


オックスフォード大学のオックスフォード・ジャーナルに掲載された2005年のコロンビア大学神経科学科のレポートです。

自殺者の多くがアルコールを飲んだ状態で運ばれてくることが書いてありますが、以前は、日本でも、「自殺者のほとんどは酒か薬を飲んでいる」と言われていたのですが、そういうことは、なぜ言われなくなったのでしょうか。

また、このレポートでは、アルコール依存も含む精神病歴のない自殺者に、アルコールがかなり絡んでいるのではないかという、長い間語られてきた考えも示されています。アルコールに引き起こされた衝動による突発的な自殺です。

たぶん、無視されている警告(1)

エーザイが医療関係者向けに医学医療情報を発信している『CLINICIAN(クリニシアン)』。その1990年のバックナンバーに「アルコールと自殺」というタイトルの文章があります。著者は有名な大原健士郎です。