発泡酒市場拡大と自殺との関連。ありえないことですか?

年間自殺者数は、1998年に突然8,500人も増加し、以後年間3万人時代に突入しました。

その原因については、不景気による失業など経済的要因を中心に検討がされていますが、どれも決定的な説とはなっていません。これほどまでに突発的な上昇が、経済的→心理的変化で起こるだろうか、という疑問がいつも付いて回ります。

原因が特定できないまま、毎日100人近くの人々が自ら死を選んでいます。

国の依頼を受けた研究機関が見逃していることがないだろうかと考えてみました。それは、きっと経済的・心理的要因ではないのではないだろうかと。

自殺者急上昇のタイミングを絞ると、1998年2〜3月です。例えば、この時期以降に多くの人に取り入れられた物質はないだろうか・・・。

そして、ひとつ気になることがありました。

1998年2月、キリンの淡麗<生>の発売。そして、発泡酒市場の急拡大。

発泡酒には何が入っているか。危険性が考えられるものは、まずアルコール。そして、ビールらしさをつくるために加えられる数々の食品添加物です。多くの場合、成分は一括表示などで詳しくは表示されていません。

アルコールの危険性は、一般的と言えるほどに指摘されています。アルコールと自殺との関連を探る研究も行なわれています。

食品添加物の危険性については常に、政治(権力争い)により認可・不認可が左右される状況に置かれてきました。

人工甘味料をはじめとして、指摘されている危険性が、アルコールと似通っている食品添加物も多くあります。脳への作用(脳の変性・変成)と、うつ傾向の促進です(自殺者のほとんどが、うつ症状を示していることは今常識となっています)。

また、なぜか日本ではニュースになっていませんが、2006年5月アメリカで、「アルコール+人工甘味料」が、血流アルコール量をより短時間により増大するという研究結果が発表されました。「アルコール+人工甘味料」には相乗効果があるのです。また、アルコールと相乗効果のある添加物は、人工甘味料だけではないかも知れません。


ところで、以前の自殺者率は、年齢につれて高くなる傾向がありましたが、1998年以降の自殺者の年齢分布は50歳ぐらいにピークがあります。これによって、経済的要因の強さを指摘する見方もありますが、一方、この分布(傾向)にそっくりなグラフがあります。それは、年齢別アルコール消費量のグラフです。また、アルコール消費量の男女差(男>女)は、男性が極端に高いという自殺率の男女差とも関連しているようにも思えます。

これから、それぞれのトピックについて、詳細な検証をしていきたいと考えています。

うつとアルコールの連鎖

アルコール依存症の増加が、多くの医者・専門家から指摘される中で、大量飲酒者数を始め、アルコール問題に関する多くの統計が2000年あたりでストップしています(もし新しい情報があるようでしたら、教えてください)。

日本は、世界有数の飲酒天国と言われていますが、データの欠落も含めて「天国」なのかも知れません。「地獄」の隠蔽による「天国」だと私は思います。

アルコールについては、一般的に知らされていないことが多すぎますが、探せば、情報のかけらが結構出てきます。ここでは、それらを拾っていきます。

自殺と最も関連があるといわれている「うつ病」と「アルコール依存症」との引き合う関係について、まずは、アルコール対策のために国がつくった(たぶん)唯一の機関(久里浜アルコール症センター)の資料(PDF)をどうぞ。

アルコールと自殺率との密接な関係が、この国では伝えられていない

しばらく、「アルコール+α」以前に、「アルコール」そのものと自殺との関連について記していきます。十分に伝えられているとは思いませんから。

まずは、海外の研究をまとめた産業医実務研修センターのサイト内にあるレビューをごらんください。

「アルコールの自殺率に与える影響は男性にしか認められない」というノルウェーの研究が、今の日本の自殺率の男女差を想起させますが、最後にある以下の事実を未来のために強く記憶しておきたいと思います。

「スウェーデンにおける一人当たりのアルコール摂取量を25%減少させたことで肝硬変、事故、自殺による死亡を半分にすることができた。また同様に、大量飲酒常用者(例えば上位5%)のアルコール量を36%減らすことによって肝硬変、事故、自殺による死亡を半減させることができた。」


もちろん日本でも、研究発表はされています(最近になって、という感じはありますが・・・)。

まず、厚生労働省研究班による2006年の発表全く飲まない人も自殺率が高いということが、少し話題になった発表ですが、それについての但し書きもご覧ください。

2007年になると、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の発表が出てきています。「飲酒量が増加することで自殺リスクが高まる」という単純な結論は、果たして前の研究ほど広く伝えられたでしょうか。

日本での研究ではありませんが、これらより以前に2000年に公表された「WHOによる自殺予防の手引き」が2002年に厚生労働省の補助金で翻訳されています。「これらの手引きはわが国(日本)でも十分に利用可能なものと考えられる」と翻訳時に注釈が加えられた手引きの中で、アルコールと自殺との関連が、はっきりと指摘されています

アルコールが自殺に与える影響は、国によっても認められていると考えて良いのではないでしょうか。


アルコール飲料メーカーのサイトには、必ず、アルコールと健康について書かれたページがあります。

キリンの場合。

アサヒの場合。

サントリーの場合。

サッポロの場合。


アルコールと自殺率との関連についての記述は見当たりません。アルコール依存症の説明の中にさえ。

他にも重要なことが省かれていますが、それは、また後日。


ところで、
私は基本的に規制論者ではありません。選択はできるだけ自由であるべきです。しかし、そのために情報発信はフェアであるべきだと思っています。

話はそれますが、では、危険性が発信され続けている「たばこ」についてフェアとは思いません。1社独占が法律で決められているため、選択の自由もフェアな情報発信も、原理的に不可能です。

「WHOによる自殺予防の手引き」に示されているアルコールの危険性

前回の記事で、「WHOにより自殺予防の手引き」へのリンクを忘れていました。重要な文書ですので、ここで再度触れます。


文章量はそんなに多くありませんから、ぜひ全体を読んで欲しいと思いますが、ポイントとなる記述を抜き出しておきます。


・自殺者の約1/3 は生前にアルコール依存症であった。※
・アルコール依存症患者の5〜10%が自殺する。
・自殺を決行する際に酩酊状態にあった者が多い。

※アルコール依存症と自殺の関連は、欧米ではわが国以上に強調されている。


※印の注釈は、日本語への翻訳時に付けられたものです。しかしこの日本側のコメントの、裏づけとなるような研究は、あるのでしょうか(誰か教えていただけないでしょうか)。


もうひとつ重要なポイントを上げておきます。

「うつ病とアルコール依存症が合併した場合、自殺の危険は一層高くなる。」

アルコールで「脳が溶ける」ことは、ちゃんと伝えられていない

「シンナーをやってはいけない」ということの説得材料として、よく持ち出されていたのが、シンナーによる脳の萎縮です。「脳が溶ける」と言いますよね。

それは、下の写真みたいな感じでしょうか。これはシンナーではありません・・・アルコールによって認知症となった脳です。



(↑クリックで拡大)

この写真が載っている『精神の脳科学』(東京大学出版会)から、「アルコールの生理作用と問題点」という項目を引用します。(読みやすいように段落を分けました)


アルコール飲料は古くより世界中で親しまれている。アルコール飲料が好まれる理由は、これらにエタノール(エチルアルコール)が含まれることによる。

エタノールは、体温や心拍などに影響するほか、運動量の亢進、鎮静作用、鎮痛作用、催眠作用など、幅広い生理作用をもつ。

導眠やストレス解消、コミュニケーションの促進など、アルコールにはメリットも多いが、エタノールの報酬効果は依存を生む。

日本のアルコール依存患者は80万人とも200万人ともいわれており、深刻である。

アルコールによってビタミンB1が欠乏して、ウェルニケ脳症が起こると意識障害や記憶障害が現れる。これが慢性化するとコルサコフ症候群となり、断酒しても回復は限定的となる。さらに長年の過度の飲酒は脳の広い領域で変性を引き起こし、アルコール性認知症となる(図4.17)。

その他、アルコール依存は、肝機能障害など、さまざまな身体疾患を併発しやすい。

 

 

恐怖訴求をしたいわけではありません。長期のアルコール摂取の影響もきちんと伝わっていませんが、アルコールは、脳(つまり思考など)に強い影響を与える物質であることを知って欲しいのです。

周りの人間にとっては、理にかなっていない、あるいは腑に落ちない自殺が多いのは、自殺には理にかなっていない衝動によるものが、かなり含まれているからではないでしょうか。

その訳のわからない衝動の何割かは、アルコールによる脳の暴走ではないだろうかと予想しています。

逆に言えば、アルコールによる脳の暴走の危険性を、本人あるいは周りの人間が少しでも知っていれば、防げた自殺もあるのではないでしょうか

その一瞬を乗り切れば、以後ずっと生きていられた人たちの・・・

飲んだら死ぬな!

本来ならば、
こういうことは、お酒を売っている企業が
責任をもって教えるべきことですが、
そうしてくれる気配さえないので、
ここに書きます。



飲んだら君の本性が現れるのではない。
それは君とは違う人間だ。


アルコールは、君の脳をいじくる。
意図もなく。


だから

飲んだら死ぬな!


わけのわからない酔っ払いに、君を殺させてはいけない。


なんとか切り抜ければ、死にたい衝動は少し弱くなる。
それがたぶん、自分を少し取り戻すということ・・・

ライフリンクの自殺実態白書は、こんなのでいいのか?

ライフリンクの自殺実態白書が、いろんなメディアで取り上げられています。

自殺を減らそうとする団体は多く出て欲しいと思います。しかしこの白書の「自殺は社会構造的な問題である」という彼らの主張(前提、先入観)に、何か意味があるでしょうか。

この白書に、私は、自殺を減らしたい、それに有効な手段をなんとしても見つけたいという意思を感じません。

(地域別の)アルコール消費量と自殺率の連関を指摘しておきながら、自殺時に、薬物あるいはアルコールの摂取はあったのかどうかの調査をやっていないのは、あまりに注意力が散漫です。

また、周囲の人達(遺族)の「自殺した者」に対する(不可避的な)バイアスの入った意見だけでなく、検死結果、死亡前のカルテなどを合わせて見ることが必要です。多くの場合、遺族の考えるストーリーは正しくないということは、こういう調査をやるものの常識として知っていて当然のはずですが・・・。



日本での自殺急増に関する研究は、今まで大きなものも2回行われているわけです。そのときには今回のライフリンクの調査以上の専門的分析を行ったにも関わらず、それでも結論が先送りになっています。

1998年を境に、年間自殺者が約1万人増えたわけです。もっと細かく言えば、1998年2〜3月からの急増です。ここに皆、頭を抱えました。でも、優先的に探るべき場所は見つかったわけです。

自殺を減らすためのNPOであれば、自殺者を減らすということが第一目標です。すると、優先課題は自殺の原因を広く探ることではありません。多様であろう原因のうち、どれをつつけば自殺が減るのか、それを掴むのです。

1998年2〜3月の急増を掘り下げれば、自殺者を減らせる大きなポイントに突き当たる可能性は最も高いわけです。多くの専門家たちがつくってきた道を無視して、このライフリンクは、何をやろうとしているのでしょうか。「自殺のアカデミズム」というようなことでしょうか。


上のライフリンクへのリンクテクストをクリックして、開いたページに書かれている文章は、かなり愕然とします。


自殺は、人の命に関わる
極めて「個人的な問題」である。
しかし同時に
自殺は「社会的な問題」であり、
 「社会構造的な問題」でもある。


こんなことは、調査や分析をしなくても、寝ていても、書けるわけです。恥ずかしさに押しつぶされなければ。

こういう結論で満足するNPOなら、活動をやめるべきです。何の役にも立ちませんから。こんな調査発表をのうのうと出してくるというのは、動機が不純である可能性も高いと想像してしまいます。正しい意図を持っているのなら、チェック機能が働くはずだからです。

「自殺を減らす」ということを真剣に考えた、他の人たちの活動に期待します。

過去の安酒ブームは自殺者増と結びついているか

年間自殺者数、自殺率の推移はこうなっています。厚生労働省発表の自殺死亡の年次推移

98年は、発泡酒市場拡大とのリンクを疑っていますが、以前のピークには何との関連が疑われるでしょうか。

一つ前のピークは、1983〜87年でした。チューハイブームと重なります。

その前のピークは、1954〜60年でした。三増酒(三倍増醸清酒)の消費と結びついているのではないかと予想しています。


何か、情報がある方は是非教えてください。

うつ病ですべては説明できない

自殺といえば、最近、「うつ病」一辺倒ですが、それには気をつけなくてはいけません。たとえば、「うつ病」は男性に比べはるかに女性に多く、日本の自殺は女性に比べ男性にはるかに多いのです。

アルコール依存の男女比率と自殺者の男女比率は近い

前のブログで、圧倒的に女性に多いうつ病と、圧倒的に男性に多い自殺とを安易に結びつけることに対して疑問を提出しました。

圧倒的に男性に多いアルコール依存との関連、
アルコールの影響を、
なぜ本気になって探らないのでしょうか。

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